木は人の大切な友達。世代を超えて森との共生を。

提 案

  1. 木が人に供与している多面的な機能を理解します。
  2. 教育(木育)を行い、木が人に供与している多面的な機能への理解を広めます。
  3. 木は大切な持続可能な資源と認識し計画的に育てます。
  4. 木の育成過程に着目し、中間資源を活用します。 (間伐材、薪、ウッドチップ、バイオマス、発電、燃料、他)
  5. 木材を積極的に生活に取り入れ、木の効能を活用します。
  6. 林家が次世代展望(長期計画)を持って山を管理出来る仕組みを作ります。
  7. 山林(土地)の所在や境界を明確にする測定・記録方法を確立します。
  8. 所有者不明の森に間伐などの手入れが出来る様に、条例などの法整備をします。
  9. 台風などの自然災害から身を守るため、家の周りや街に計画的に木を植えます。

取り組み事例

  1. 「新産住拓」や「熊本の木で家を造る会」による林家と施主を結ぶ産直方式の実践
  2. 熊本大学の田口教授らによる木育の指導者の育成(市民へ木育講座を開催)
  3. 九州森林管理局による間伐材由来の「木になる紙」の企画(収益を林家へ還元)
  4. 熊本県による「木の駅プロジェクト(土佐の森方式)」の社会実験の実施
  5. 菊池市旭志の林業研究グループによる提案型集約化*の推進
  6. 林業を学んだ非林業家の研修生がつくったチームによる間伐仕事の請負
  7. 天草市の木製家具製造家森氏による小学校の机・イスの開発

*集約化:間伐の効率を上げるため境界を細かく調べ小規模林地をまとめる作業「森林施業プランナー」民間資格の取得者は、県内50名で北海道に次ぐ。

事例1 人吉・球磨の地域材を使った家造り

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新産住拓株式会社は、住まいに使う木材は、その住まいと同じ気候風土で育った木を使う事を理想として、人吉・球磨の良木・良材を使った「木の地産地消」の住まい造りを実践しています。(住宅会社として九州初のSGEC認定を取得し、主要構造材で国産材100%、熊本県産材81.5%)合板の接着剤による有害化学物質の影響を避けるため、床下や天井裏など一般的に合板を使う様な見えない場所にも無垢材を使っており、湿気を吸出しながら家の湿度を程良い状態に保ちます。木を建築材料とするには「乾燥」が重要な要素ですが、香りや木肌の艶、美しい色を保ち、虫がつきにくく強度劣化が少なくするため、山で葉の蒸散作用を利用して2~3ケ月乾燥した後、ストックヤ-ドで平均約1年間、太陽と風の力で天然乾燥させています。球磨郡多良木町へ多良木プレカット協同組合を設置し、素材生産業者、製材工場との連携で、山で葉付き乾燥させた原木を近くの製材所で目的に従って製材、近くのマ-ケットに供給する木材流通産直システムで「農商工連携」の認定を受けています。    

(井上 智)

事例2 木育(もくいく)で伝える森の役割

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多くの人に、木の良さや森の大切さを体感してもらうという木育(もくいく)が、全国各地で展開されつつあります。最も盛んな地域は熊本県です。熊本大学の教職員や学生、県内の中学校教員、任意団体の熊本ものづくり塾の連携により、「くまもとものづくりフェア」をはじめとしたものづくり教室が開催され、年間1万人の参加があります。そこでは、県産の杉や桧を素材にしたものづくりが行われ、円形木琴、スパイスラック、くまモンストラップなどが作られています。木に触れる活動の中から、木の香りや肌ざわり、温かさに触れてもらい、さらには森の多面的機能にも目が向くようなることを目標に実施しています。また、各地域で木育を展開する指導者を養成する講座は、この6年間で熊本県や熊本大学の主催で28回開催され、北は福島県、南は沖縄県など全国各地から1,100人の方が受講されています。

(熊本大学教授 田口 浩継)

事例3 間伐材からの「木になる紙」

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九州森林管理局では、森林を間伐した材を集約し、チップ加工して製紙工場で紙製品化し、消費者がそれを購入することで、森林を管理する林家へ収益を還元する仕組みを構築しています。(熊本県では主に小国森林組合が担っており、一旦加工業者でチップ化された後に、製紙会社に納入されています。)急峻な地形と山々が多い日本は、防災の観点からも森林を適切に管理する事が必要です。また、私たちは森林から建材や林産物、空気や水など山の恵みを得ています。山に木を植え育て収穫しまた植えるというサイクルは世代を超えるため、これを維持するには山村の林家の暮らしを支える事が必要です。身近な所から山を応援したいという想いから企画された、間伐材で作られた「木になる紙」(コピー用紙)は、一箱で、面積で20㎡の間伐と2.6kgのCO2削減の貢献となります。そして、林家には一箱50円程度が還元される仕組みです。「木になる紙」は、海外製品やその他の紙に比べちょっとだけ高い紙ですが、その原料の背景(森林や山村の現状や環境)を考えてみれば、紙を通して未来の環境を選んでいるのです。    

(井上 智)

事例2 木の駅プロジェクト(八代、小国、五木、大津)

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八代、小国、五木、大津では、市場価格が低く山林に放置された木材(林地残材)を集めて地域通貨と交換し、集められた木材は燃料等に利用する「木の駅プロジェクト」を進めています。森林保全と山間部の経済活性化の両方を狙った取組みで、県もモデル地域に指定し定着と他地域への普及を支援します。高知県のNPO法人が始めた「土佐の森方式」が全国へ広がっています。「木の駅」と称される木材の集約所に木材を持ち込みエコマネー等へ換金します。小規模な自営農家の副業的な運営を助け非林業家の参加を促すもので、「道の駅」の林業版です。本プロジェクトでは、市町村や商工団体、林業関係者でつくる地域協議会が運営主体となり、会員が残材を「木の駅(集荷拠点)」へ持ち込むと、協議会が地元の店で使える地域通貨で代金を支払います。また、集まった残材は主に第三セクターの温泉施設にボイラー燃料として販売します。地元でお金や天然資源が循環し、林業関係者の副収入や森林管理の他、地元商店街振興の効果も期待されています。

(井上 智)

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